懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
しかし、いつまでも子供ではいられない。

今のラナは分別ある大人に成長し、勝手に城を抜け出すことはなく、王女らしく他貴族と交流したり、性に合わないレース編みも我慢して行っている。

自分では随分と大人しくなったつもりでいた。


(運動不足解消に、剣を振るうくらい、いいじゃない……)


『王女らしくしなさい』という注意は、昔から父親にうるさく言われてきたため、今さら腹立たしく思ったりしないが、カイザーに同じことを言われるとムッとしてしまう。

カイザーは誰よりも自分の味方であり、よき理解者だと思っていたから、そんな小言は言われたくなかった。

「そう思うなら、なんで私の剣の相手をしてるのよ」と、ラナが口を尖らせて矛盾を指摘したら、カイザーは彼女の剣を上手にいなしつつ、口の端をつり上げる。


「俺が相手をしてやらないと、他の兵士とやり合うだろ。皆、お前を怖がってるぞ。兵服を切り刻まれたくないとさ」

「兵士のくせにだらしないわね。切られないようにかわしなさいよ」


カイザーが相手だと、ラナがどんなに鋭く斬りかかっても、髪の毛一本、傷つけることはできない。

だから、ラナは安心して剣を振るうことができる。

けれども、彼が巡回や警備で不在の時には他の兵士に相手をしてもらわねばならず、そうすると相手を傷つけないようにと気を使い、ラナはやりにくさを感じるのであった。
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