懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
カイザーが剣の相手をしてくれなくなったらどうしよう……と彼女は急に不安になり、剣を止めると、「ねぇ、嫌なの?」と真顔で問いかけた。

するとカイザーは目を瞬かせた後にフイと視線を逸らして、「お前に遠慮はしない。嫌ならとっくにやめてる……」とボソリと呟く。

その頬は、心なしか赤みを帯びていた。


それを聞いたラナは、パッと顔を輝かせる。

彼も楽しんでいるのだと解釈し、俄然張り切って剣を構え直した。


「カイザー、覚悟しなさい。そのツンツンした髪、私の剣で華麗にカットしてあげるから!」

「やれるもんなら、やってみろ。国中の女の中で間違いなくお前が一番の剣士だが、俺の足元にも及ばない」


激しく剣をぶつけ合うふたりの影が、闘技場の赤土の地面に長く伸びている。

くっついては離れ、遠のいては重なって、まるでダンスを踊っているかのように息がぴったりと、実に楽しげな影であった。



それから二時間ほどが経ち、カイザーと別れたラナは今、家族とともに晩餐室にいる。

剣の稽古でかいた汗は沐浴でさっぱりと流し、ミントグリーンのイブニングドレスに着替えて、サイドを編み込んだ髪を美しく結い上げている。

侍女の手により化粧も施されたため、黙って座っていれば、気品あふれた淑女に見えることだろう。

胸元に下がるダイヤとエメラルドの豪華なネックレスは、シャンデリアの光を浴びて輝いていた。
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