懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
それを見ている王妃は、心配そうである。

五十になろうかという年齢の王妃は、肌艶がよく、若かりし頃の美貌を維持していると言えよう。

ラナの容姿の大部分は母譲りであるが、性格は違う。

王妃の方が穏やかで大人しく、気が弱いところもある。

オロオロとした様子の王妃は、レースのハンカチを取り出して目頭に当てると、「あなた、申し訳ございません」と夫に謝罪した。


「わたくしが至らぬばかりに、子供たちがまともに育ちませんでしたわ。ひとりは色事ばかりの愚か者で、もうひとりは未だに結婚の申し込みもない跳ねっ返りで……」


「え……わたくしもですの?」と、ラナは意表を突かれた思いで、涙する母を見た。

まさか、アホな兄と同列で非難されるとは考えていなかったのだ。


反論しようか、どうしようかとラナは考えている。

結婚適齢期の十九になっても求婚者が現れないのは、その通りであるのだが、それは彼女がお転婆娘であるから敬遠されているわけではない。

ここ数年のラナは、淑女に見られるよう努力して振舞っているつもりである。

両親に恥をかかせないようにと、他貴族と交流する際には特に、立ち居振る舞いに気をつけているので、『実に王女らしくお育ちになられましたな』と褒められるほどであった。
< 15 / 225 >

この作品をシェア

pagetop