懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
それならばなぜ、求婚されないのかと言えば……ラナが自分で断っているからである。

舞踏会や晩餐会で青年貴族に言い寄られたら、その都度、あなたに興味はない、ということを態度で示すようにしているのだ。

貴族に生まれた娘の宿命として、いつかは他家に嫁がねばならないとわかっていても、好きでもない相手と結婚したくない。

できることなら、いつまでもこの城で、カイザーと楽しく剣を交えていたいと思うので、結婚話が出ないように、彼女自身がコントロールしていた。


子供たちがまともに成長しなかったと嘆く母と、頭を抱えて唸る父を見ているラナは、反論するのはやめにし、眉尻を下げてフォークを置いた。

メインディッシュの皿は下げられて、デザートに『さくらんぼのクラフティ』が出されたところだが、両親に対して申し訳ない気持ちになってしまったため、急に食欲を失っていた。


(ごめんなさい……でも、私がお嫁に行ったらカイザーに会えなくなるじゃない。私が素顔を見せられるのは、カイザーだけなのに……)


口に出さずに言い訳をしたラナは、それから横目でジロリと兄を見た。

王太子は両親の憂慮を意に介さず、美味しそうにデザートを頬張っている。

それを目にすれば、ラナの心の呵責は薄らいで、兄を非難する気持ちの方が優先された。


(とばっちりで叱られたじゃない。お兄様がもう少しまともだったら、私まで王女として努力不足だと言われなかったわよ、きっと……)


全ては兄のせいだということにして、自分の問題から目を逸らしたラナは、さくらんぼの焼き菓子にデザートフォークを突き立てたのであった。

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