懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
ハッとして、恥ずかしそうに皆に背を向けたカイザー。

その背中に、「それも冗談なのに」という、ラナの明るい声がかけられる。

しんみりと寂しげであった空気はどこへやら。

最後は皆が笑っていられるよう、場の雰囲気を調整するのは、いつもラナの役目であった。


夕食は、干し肉とジャガイモのスープだ。

それにカチカチの乾パンを入れて、柔らかくしたものを口にする。

質素なメニューでも、大自然の中で信頼の厚い仲間たちと食べれば、美味しく感じられるものである。

ラナが満足して食事を終えたら、辺りはすっかり夜となり、空にはたくさんの星が瞬いていた。


カイザーを誘ったラナは、焚き火から離れて波打ち際まで歩き、肩を並べて立ち止まった。

湖岸は白い玉石が、敷き詰められたように広がっていて、そこに打ち寄せる波は控えめで穏やかだ。

夕食前にオルガに手伝ってもらい、沐浴を済ませたラナの髪は、まだ少し濡れている。

秋の夜風は優しく吹いているが、「寒くないか?」と心配するカイザーに、彼女は「ちょっと寒い」とマントの前合わせを引き寄せた。


「だったら、焚き火のそばにーー」

その提案を「やだ」と拒んだ彼女は、空を仰ぐ。

紺碧の空には宝石よりもまばゆい星たちが、輝きを競い合うように瞬いて、なんとも美しい。


「綺麗ね。王都の夜空には、こんなにたくさんの星が見えないわ。ここの景色は王都よりもずっと素敵よ……」


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