懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
天に向け、感嘆の息をついたラナ。

その横顔を見ているカイザーは、美麗な顔を微かにしかめた。

「帰りたくないのか?」と問う声は、心配そうである。

それを否定も肯定もせずに、彼女は上を向いたままで決意を述べる。


「私は王城に帰って女王になる。そこに少しの迷いもないわ。カイザー、大丈夫だからね」

「……ああ」


ホッとしているようにも、残念そうにも聞こえる返事に、ラナの視線が彼に向いた。


「もしかして、私が女王になるのが嫌なの?」

「そんなわけないだろ。お前が王位に就かなければ、王太子殿下が次の国王だ。この国が混乱する様を見たくない。だが……」

「だが……なに?」

「いや、なんでもない」


彼が湖へと視線を逸らしたのは、本心を悟られまいとしてのことなのか。

けれどもラナには、カイザーの胸の内が見えたようで、彼に代わって口にする。


「私が女王になれば、今のような近い距離感でいられない。公務に追われて、ふたりで馬鹿言い合ったり、こうしてのんびり星を眺めることもできない。人前で軽口を叩くなんて、もってのほか。私が遠くに行っちゃうようで、それが嫌なんでしょ……?」
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