懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
カイザーがジロリとラナを睨んだ。

どうやら、からかわれていることに気づいた様子で、力尽くで腕を外すと、彼女の両肩を掴んで向かい合わせに立たせた。

「な、なに?」と、次に戸惑うのはラナの番である。


カイザーの切れ長の瞳に、初めて見る蠱惑的な光が灯り、急に男の顔をして色香を溢れさせるから、彼女は目を瞬かせている。

ニッと口の端をつり上げた彼が、今まで聞いたことのない甘い声でラナを脅した。


「俺は乳兄妹である前に、ひとりの男なんだよ。からかいすぎたらどうなるか……覚悟しろ」

「……え?」


肩にのせられている彼の手に、強い力が込められたと思ったら、ラナは唇を奪われていた。

初めてのキスは、不器用なほどに強く唇を押し当てられ、すぐに離される。

掴まれていた肩も放されたが……ラナは目を丸くして、呆然と彼を見つめるのみ。

しかし、すぐにハッと我に返ると、「急になにすんのよ!」と声を荒げた。


「お前が悪いから、キスされても仕方ない。それに減るもんじゃないだろ。怒るなよ」


フンと鼻を鳴らしたカイザーに、顔を火照らせたラナは、なおも文句をぶつける。


「減らないけど、逆に増えたわよ!」

「あ? なにがだ?」


おかしな苦情を言われて彼が首を傾げたら、彼女が急に声のトーンを下げ、ボソボソと恥ずかしそうに答える。


「カイザーとの、大事な思い出が……」

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