懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
椅子にふんぞり返るように胸を張った王太子は、「それはもちろんハーレ……」と言いかけて言葉を切った。

『まずはハーレム宮の建設だ』などと言い出せば、王太子派の貴族たちも呆れて、支持率を下げる結果になるのでは……。

頭の中が美女とのイチャイチャ妄想でいっぱいになっていても、それくらいはわかるようだ。


これまでにハーレム宮計画を何度も聞かされてきたラナなので、兄が何を言おうとしたのか、理解している。

その上で、これは兄を蹴落とすチャンスかもしれないと思い、とぼけた顔をして「ハーレ?」と問いかけた。


すると王太子は、マズイと言いたげな顔をする。

微かにざわつく貴族たちを前にして、なんとかごまかそうと目を泳がせる彼は、「ハーレ……」と二度繰り返してから、「ハーレックション!」とおかしなくしゃみをしてみせた。


「いやはや、鼻がむず痒い。空気が淀んでいるな。父上、休憩を挟んで換気してはいかがでしょう?」


息子を情けなく思う国王は、黙って首を横に振り、ラナは心の中で毒づいた。

(能無し愚兄が……。それで切り抜けられたと思わないことね)


しきりに鼻をこする兄に冷たい視線を向けつつ、彼女はつい、本音を口にしてしまう。


「公務は臣下任せで、色恋事に励むつもりでしょ? スケベなお兄様が国王では、王家の信頼が地の底まで失墜するわ。下克上の末に首チョンパがオチね。それが嫌なら大人しく王位を譲り、私の庇護下で遊んでいなさい」

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