懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
「見回り当番なの?」と問えば、周囲を気にして潜めたような低い声で、「ああ」と返される。

それから苦い顔をした彼に、注意を受けた。


「お前は一応女だぞ。寝間着一枚でバルコニーに出るな。早く部屋に戻ってベッドに入れ」


王女がネグリジェ姿でバルコニーに出るとは、確かにはしたないことである。

カイザーの注意はもっともであるのだが、余計な心配だとばかりにラナは、口を尖らせて言い返す。


「えー、いいじゃない。誰も見てないし。それに眠れないんだよ。カイザー、話し相手になってくれない?」


「ここまで上ってきて」と彼女が誘えば、彼は凛々しい眉をひそめて、「無理」とひと言で断った。

その理由は、「姫様の寝室に忍び込んだらマズイだろ」ということらしい。

しかしラナは、「マズイってなにが?」と首を傾げて反論する。


「私とカイザーが一緒にいても、変に思う人はいないよ。ほぼ兄妹じゃない」

「乳兄妹だ。とにかく俺を誘うな。夜中にこうして話しているだけでも、マジでヤバイ」

「だから、なにがマズくて、どこがヤバイのよ。来ないなら、私がそっち行く。飛び降りるから受け止めてね」


地面までの高さは五メートルほどであろうか。

ちょっと高いなと感じるラナだが、カイザーの身長を考えれば、落ちるのは三メートルほどだと計算し、手すりに片足をかけた。

すると、「わっ、馬鹿、やめろ!」と彼が慌てている。

怪我を心配しているのではなく、「下着が見えるだろ!」という懸念であった。

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