懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
それを指摘した彼はハッとした様子で、「いや、ええと、そうじゃなくて、危ない真似は……」と目を泳がせ、言い直している。

恥ずかしいことを口にしてしまったと動揺しているようなカイザーに、ラナは思わず吹き出した。

「なに焦ってんのよ。暗くてスカートの中まで見えないでしょ」とからかった彼女は、足を下ろすのではなく、手すりの上に体重の全てをのせて、もう片方の足も持ち上げようとしていた。

それを目にしたカイザーは、観念したようだ。


「わかった。俺が行くから、そこで待ってろ」と言うと、石造りの城壁の装飾やわずかな凹凸を利用して、大きな体でひょいひょいと身軽に上ってきた。

彼がバルコニーにたどり着けば、ラナは手すりの内側に足を下ろし、満足げな笑みを向ける。


「ありがと」

「あ、ああ……」


カイザーは隣に立つラナをチラリと見た後、手すりに片手を置いて、なぜか背を見せるように横を向いた。

怒っているような雰囲気ではないのに、こっちを向いてくれない理由はなんだろうと、ラナは首を傾げたが、「で、なんで眠れないんだ? 悩み事か?」と問いかけられたため、気が逸れる。

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