懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
「うん。来年の夏がくるのが怖いなって思って。平和が続くように、私にできることがないか考えたんだけど、政治に関わらせてもらえないし、女だから無理だよね……」


「王の素質は、王太子殿下よりお前の方があるのにな」と月に向けて言ったカイザーは、しばし黙り込む。

藍色の騎士用ロングコートを纏った大きな背中に、「カイザー?」と彼女が呼びかけたら、彼はまた口を開いた。


「外国には女王も存在する。ラナが王位につけば、全ての問題が解決だ」


兄ではなく妹の自分が王位を継承する……それは、ラナがこれまでに考えたことのない未来の形であった。

とは言え、この国の王室典範には、王位継承権を有するのは【直系の男子のみ】とはっきり記されているため不可能である。

カイザーとしても、実現しないことを承知の上で口にしたはずだ。

おそらくは、ただラナとの会話を繋げるために言ってみた、というところであろう。

それは、成り行きを見守る以外にないと言いたげな、重たいため息に表れていた。


けれどもラナは、カイザーの言葉にハッとしていた。

まるで、迷子になった夜の森で、月明かりに照らされた帰り道を見つけたように、一気に胸に希望が広がっていく。

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