懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
「そうよ……それだ!」と彼女が叫んだから、カイザーは逞しい肩を揺らし、驚いてラナの方に振り向いた。


「お父様に話してみる。私を女王にしてくださいと、お願いしてみるよ!」


ラナの眼差しは真剣で、握りしめた右手には決意と気迫が感じられた。

冗談で言ったのではないと理解した様子のカイザーは、顎に手を添えて考え込んでいる。

それからニッと口の端をつり上げて、「試してみる価値はあるな」とラナの意見に同意してくれた。

その上で覚悟を聞いてくる。


「わかっていると思うが、王位に就いたとしたら、今よりも窮屈で制約の多い生活が待っているぞ。自由はない。いいのか?」


ラナが自由を求めて城壁の外へ逃げ出すような子供であったのを、一番近くで見てきたカイザーはよく知っていた。

そのため、待ち受ける不自由さにラナが耐えられるのかと、彼は不安に思っているようだ。

その心配を跳ね飛ばすような笑顔を浮かべたラナは、「それでいい」と即答した。


「私の自由より、平和の方が遥かに大事。王座についたら、この国に生きる民のために、私の全てを捧げるわ」

「ラナ、お前って奴は……」


彼女の本気を受け止めたカイザーは、感動しているような顔で彼女の緑がかった碧眼を見つめている。

そして彼自身もなにかを覚悟したように、真剣な目をして口を開いた。

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