懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
ラナの砕けた言葉遣いは、一緒に育ったカイザーの影響であろう。

乳の出がよいという理由だけで、貴族ではないカイザーの母親が、ラナの乳母に選ばれた。

今は騎士爵を持っていても、カイザーは平民の出自である。

加えて幼い頃のラナは、城を抜け出しては街の子供たちと遊んでいたので、オルガの言う通りであった。


オルガに話しかけられ、足を止めて振り向いたグリゴリーは、「これは気づかず、すみません」と人の良さそうな顔をして謝った。

オルガの息は弾んでいる。

小柄な彼女には、歩くペースが速すぎたとグリゴリーは感じ取ったようだ。


「オルガさん、疲れたでしょう」と気遣うグリゴリーに、彼女は「まだ平気です」と強がりを言う。

その会話を耳にしたラナも足を止め、「あ、オルガごめん」と謝ったら、彼女が「キャッ!」と声を上げた。

グリゴリーが彼女をひょいと抱えて、彼の右肩に座らせたからだ。


「グリゴリーさん、下ろしてください。私は子供ではありません!」と真っ赤な顔で怒るオルガであったが、グリゴリーは少々天然な性格をしており、的外れな返事をする。


「遠慮は不要です。自分、力持ちですから。この前は、足を怪我した馬を担いで城まで戻りました」


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