懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
鉄で縁取られた分厚い両開きの木戸を開けて入ってきたのは三人の男たちで、そのうちのふたりは、ラナのよく知った人物だ。
彼女の兄で、ミトロニア王国の王太子であるエイドリアンと、その近侍である。
瞳や髪の色は同じだが、この兄妹、さっぱり似ていない。
二十四歳の王太子は中肉中背で少々間抜けな顔立ちをして、文武両道を真逆にいく愚か者であった。
対して妹のラナは、王女には不要なほどに運動神経抜群で、学問もよくできた。
王太子は、ラナとカイザーに気づいていないのか、簡素なベストを着た町人のような姿の見知らぬ中年男性を相手に、大声で話し始める。
「ここを潰して、宮殿を建設しようと思っている。砂漠の都にあるような、玉ねぎ型の屋根と白亜の壁がいい。国中の美女を住まわせるからな。内装は女性向きな設えにしてくれ」
エイドリアンの希望を、羽根ペンで手帳にメモしている男は、どうやら王都の建築士のようだ。
近侍はやれやれと言いたげな顔で、主君から一歩下がった位置に控え、黙って立っている。
エイドリアンに呆れの視線を向けているのは、扉から二十メートルほど離れた闘技場の中程にいるラナも同じであった。
(馬鹿馬鹿しい夢を実現させる気でいるのね。お兄様はどうしてあんなにもアホなのかしら……)
彼女は心でそう呟き、嘆息する。
彼女の兄で、ミトロニア王国の王太子であるエイドリアンと、その近侍である。
瞳や髪の色は同じだが、この兄妹、さっぱり似ていない。
二十四歳の王太子は中肉中背で少々間抜けな顔立ちをして、文武両道を真逆にいく愚か者であった。
対して妹のラナは、王女には不要なほどに運動神経抜群で、学問もよくできた。
王太子は、ラナとカイザーに気づいていないのか、簡素なベストを着た町人のような姿の見知らぬ中年男性を相手に、大声で話し始める。
「ここを潰して、宮殿を建設しようと思っている。砂漠の都にあるような、玉ねぎ型の屋根と白亜の壁がいい。国中の美女を住まわせるからな。内装は女性向きな設えにしてくれ」
エイドリアンの希望を、羽根ペンで手帳にメモしている男は、どうやら王都の建築士のようだ。
近侍はやれやれと言いたげな顔で、主君から一歩下がった位置に控え、黙って立っている。
エイドリアンに呆れの視線を向けているのは、扉から二十メートルほど離れた闘技場の中程にいるラナも同じであった。
(馬鹿馬鹿しい夢を実現させる気でいるのね。お兄様はどうしてあんなにもアホなのかしら……)
彼女は心でそう呟き、嘆息する。