懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
カイザーは興味なさげにあくびをしていて、イワノフはホッホと笑っている。

ラナは……グリゴリーに駆け寄ると、「ズルイ、私ものせて!」と目を輝かせた。

歩くのに疲れたのではなく、大柄な彼の肩にのれば目線が倍以上も高くなり、楽しそうだと思ったためである。


すると、それまで呑気に構えていたカイザーが、慌てたようにラナの肩に手をかけ、止めに入った。


「お前は駄目だ。どうしてもというなら、俺がおぶってやるから」

「えー、カイザーよりグリゴリーがいい。高い方が気持ちよさそうじゃない」

「フン。馬鹿は高い所が好きだとよく聞くが、本当なんだな」

「なんですって……!?」


仲がいいのか悪いのか。

すぐに口喧嘩になるラナとカイザーを見て、他の三人は目を瞬かせていたが、同時に吹き出すと、青空に向けて楽しげな笑い声を響かせるのであった。


山越えする際には途中の村で馬を借り、その他の道のりはおもに徒歩で移動して、旅立ちの日から十日が過ぎた。

空にこんもりと浮かんだ夏雲は、茜色に染まっている。

日没まで、あと三十分ほどであろう。
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