懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
そろそろ宿を確保しなければならない時間になって、ラナたちはやっと目的の貴族領に到着した。

王都より遥か北に位置し、領地の半分が山で林業が盛んというこの領地は、レベンツキー伯爵が治めている。

町の入口には、やる気のなさそうな顔をした中年の役人がいて、旅人の足を止めると、出入者台帳に記入するよう声をかけていた。


イワノフが代表してペンを取り、【イワノフ一家】という偽の素性と、ここよりさらに北にある、とある貴族の屋敷に一家で雇われに行く途中の宿泊だという、滞在理由を書き込んだ。

枯れ草色の皺くちゃな帽子を被った役人は、ラナたちの頭数を数えて、「四人家族だな」と台帳に記入している。

それを聞き、グリゴリーの陰から急いで顔を覗かせたのはオルガである。

「私もいます。家族は五人です」と訂正したら、役人は「末っ子のおチビちゃんもいたのか」と、役人は面倒くさそうに人数を書き直していた。


するとオルガのこめかみがピクリと動いた。

常日頃、実年齢より随分と幼く見られてしまうことを気にしている彼女なので、役人の発言が気に障ったらしい。
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