懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
(活気がないわね。それにあちこち、ボロボロだわ……)

ラナは道を行き交う人々の少なさや、補修されずに割れたままの石畳を見て、そう思っていた。

粗末で汚れた貫頭衣とズボンだけといった装いの町男に、つぎはぎだらけのエプロンを着た老女が、ラナたちとすれ違う。

林業が主産業であるから、この町では木材を安く手に入れられると思うのに、板壁が朽ちかけている道沿いの店もあった。

なにより町の人々が、皆、疲れきった顔をしていることが、ラナは気になった。


(一日の仕事を終わらせようとしている日没前だから、疲労しているのかしら。それにしたって、随分と元気がないように見えるけど……)


メインストリートを歩くこと五分ほどで、宿屋を見つけ、五人は入っていく。

二階建てで横長の宿屋は、部屋数が三十ほどありそうな大きさである。

ドアから入ってすぐの小さなロビーは、殺風景なほどに飾りけのない空間であった。

木製の長椅子が二脚、向かい合わせに置かれているだけで、花も絵画も飾られていない。

それでも営業中の店だとわかるのは、壁の燭台に小さな火が灯されて、カウンターの奥から宿屋の主人が「いらっしゃいませ」と現れたからである。
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