懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
文句を言われることに慣れているのか、宿屋の主人は怖がることもマズイと焦ることもない。

「嫌なら、別の宿屋に泊まってください。どこも似たような値段だと思いますけどね」と、重たいため息をついただけであった。

眉を寄せたラナが「似たような値段?」と、主人に対してではなくカイザーを見て復唱したら、彼は後ろに振り向いて「グリゴリー」と部下に呼びかけた。

グリゴリーは重たい布袋を床に下ろして、ドアの横の壁に背を預けて立っていたのだが、軽く頷くと、素早く宿屋を出る。

そして、三分ほどで息を弾ませ、戻ってきた。


「宿屋のご主人の言う通りです。この通り沿いの他の二軒の宿屋も同じ値段設定でした」


宿屋の主人はなんの感情も表さず、「お客さん、どうしますか?」と淡々と問いかけてくる。

ずり落ちそうな丸眼鏡をかけ直し、何かを考えているようなイワノフと、長椅子に座って足の疲れを癒しているオルガ、それから『仕方ないんじゃないか?』と言いたげな顔をしているカイザーを順に見たラナは、渋々頷いた。

ぼったくられた気分で面白くないけど、今夜はここに泊まるしかない。

適正な価格の宿屋を探していたら、すっかり日が暮れてしまいそうだ。

(それに、宿代が高い分、食事は豪華なものが出されるかもしれないわ……)

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