懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
イワノフが言われた通りの代金を支払っても、宿屋の主人はありがたがることはなく、相変わらずの無愛想でやる気のない顔をしていた。


それから数時間が経ち、イワノフの懐中時計は二十一時半を示していた。

カイザーたち男性三人が泊まる二階の角部屋に、ラナとオルガも集まって、五人で話しをしていた。


「何なのよ、この宿屋は!」と憤慨しているのは、ベッドに腰掛けているラナである。

部屋はマットレスの硬い粗末なベッドと、オイルが少ししか入っていないランプがのせられた小さなテーブル、椅子が一脚と洗面ボウル以外なにもない。

シーツと毛布は洗濯石鹸の香りはするけれど、穴が空きそうなほどに擦り切れていた。


しかしラナの怒りの原因は、それよりも食事にあった。

夕食は一階にある食堂で出されたのだが、具がジャガイモのみのシチューと、靴ほどの大きさの塩パンのみであった。

量は足りたが、高い宿代を考えれば、肉や魚、果物が出されなかったことに文句を言いたくなるというものだ。

給仕中であった宿屋の主人に掴みかかりそうになっていたラナを宥めて、カイザーが冷静に『他になにか出せないのか?』と抗議してくれたのだが、首を横に振られてしまった。

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