懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
『嫌なら別の宿屋に泊まってください』という改善する気のない二度めの返事をされては、ラナの怒りのボルテージは簡単に上がる。
けれども宿屋の主人が、『俺らのせいじゃないんだ……』とボソリと呟いたことで、ラナは文句を言うのをやめて目を瞬かせた。
どういうことかと尋ねても、詳しい説明はしてくれずに『忙しいんで』と食堂から出ていってしまったが、主人の言葉がただの責任転嫁ではないとすれば、この町にはなんらかの異変が起きているようだ。
イワノフはギシギシと軋む椅子に座り、木箱のような粗末なテーブルにのせられたオイルランプの明かりで資料を読み直している。
なんの資料かといえば、国王がトップに君臨する中央政府が把握している限りの、この領地に関する情報をまとめたものである。
それはラナも、城を出発する前と、このレベンツキー領に入る前の二度読んで、頭にインプット済みであった。
イワノフがボソボソとした声で、独り言のように資料を読み上げる。
「レベンツキー伯爵家の当主は四十五歳。中央美術学会の一等会員で、趣味は絵画収集。自らも絵筆を取り、名画を模写することを好む。代々レベンツキー家は穏健派の貴族とみなされーー」
けれども宿屋の主人が、『俺らのせいじゃないんだ……』とボソリと呟いたことで、ラナは文句を言うのをやめて目を瞬かせた。
どういうことかと尋ねても、詳しい説明はしてくれずに『忙しいんで』と食堂から出ていってしまったが、主人の言葉がただの責任転嫁ではないとすれば、この町にはなんらかの異変が起きているようだ。
イワノフはギシギシと軋む椅子に座り、木箱のような粗末なテーブルにのせられたオイルランプの明かりで資料を読み直している。
なんの資料かといえば、国王がトップに君臨する中央政府が把握している限りの、この領地に関する情報をまとめたものである。
それはラナも、城を出発する前と、このレベンツキー領に入る前の二度読んで、頭にインプット済みであった。
イワノフがボソボソとした声で、独り言のように資料を読み上げる。
「レベンツキー伯爵家の当主は四十五歳。中央美術学会の一等会員で、趣味は絵画収集。自らも絵筆を取り、名画を模写することを好む。代々レベンツキー家は穏健派の貴族とみなされーー」