懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
グリゴリーは見張りのように、ドアに背を預けて立っている。

駄々っ子のようなラナに、隣のベッドに腰掛けているカイザーがやれやれと言いたげな視線を向けた時、「おかしいの」とイワノフが大きめの声で呟いた。

丸眼鏡の奥の瞳を鋭くした賢者に、ラナがキョトンとした顔で「なにが?」と尋ねれば、イワノフが立ち上がり、腰の後ろで手を組んでゆっくりと歩み寄った。


「三年前の視察では、町は板壁の家が多いと記されていたが、半年前の視察ではーー」


イワノフはある矛盾に気づいていた。

板壁の家が多い町のはずが、昨年の秋の視察では白壁の建物の町並みについての記述がなされていた。

それから半年ほど経った今はどうだろう。

メインストリート沿いは板壁の建物が多く、傷んでいても修理が施されないまま商いを続けている店もあった。

赤煉瓦の建物も数軒確認できたが、白壁の建物はないようだとイワノフは説明し、ラナの前で足を止めた。


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