懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
賢者の指摘に、ラナはハッとした。

資料を読んだ時、ラナもその点に引っかかりを覚えたのだが、三年前と半年前の視察団員の名簿を見ると、メンバーが全員入れ替わっていた。

それで町並みの捉え方も変わり、記述に矛盾のようなおかしさが生じたのだろうと解釈し、自己解決してしまっていた。

しかし、実際に自分の目で見た町並みと、半年前の視察団の報告書を比べたら、同じ町とは思えないほどに全然違う。

メインストリート沿いに白壁の建物はひとつとしてなく、美しいとは程遠い。

言うなれば、三年前の報告書の町並みを寂れさせ、活気を取り除いたような雰囲気であった。


「そうだよね。これっておかしいよ」と同意したラナは、顎に指をかけてその理由を考え始める。

けれども答えにたどり着けず、「どうして?」と首を傾げてイワノフに尋ねた。

すると王都一の賢者は、挑戦的に目を光らせてニヤリとする。


「町の寂れ具合を視察団から隠そうとしたんじゃろうな。慌てて岩胡粉でも塗りつけて板壁を白くし、綺麗に見えるようにしたんじゃろう。風雨の当たらぬ軒下や出窓の下の壁に、白い絵の具がわずかに残っておった」

「イワノフ、すごい!私、そこまで気づかなかった!」

「姫様、綿密な調査が必要なようですな。わしの推測では、宿賃だけではなく、全ての物価が跳ね上がっておるはずじゃ」


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