懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
普段のイワノフは、穏やかな笑みを浮かべ、一見すると好々爺である。

しかし裁判長として、ひとたび木槌を握れば、その厳しい眼光と威圧感に、罪人たちは青ざめて恐れおののくという。


照度を絞ったランプがたったひとつというこの部屋は、明かりが足りずに薄暗い。

くつろいだ姿勢でベッドに座っていたカイザーが、急に背筋を伸ばして緊張を走らせたのは、イワノフがニタリと不気味に笑ったせいだろう。

一方、イワノフと向かい合っているラナは、ゴクリと唾を飲み、肌を粟立てていた。

けれども、決してイワノフの迫力に気圧されているわけではない。

彼女は、ゾクゾクと湧き上がるような興奮を感じているのだ。


(この領地を調べ尽くして、ひとつめのミッションをチョチョイのチョイと片付けてやるわ……)


食事に関する不満はすっかり忘れ、静かに意気込むラナであった。



それから三日後。

同じ宿屋を拠点として、ラナたちは早朝から日暮れまで、レベンツキー領の秘密を暴くべく駆け回っていた。

イワノフとオルガ、グリゴリーの三人組みと、ラナとカイザーのふたり組みに分かれての調査である。
< 52 / 225 >

この作品をシェア

pagetop