懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
そして教会の正午の鐘がなった今、一度集合して、食事を取りながら情報交換しようとしていた。


ここは町のメインストリート沿いに建つ、赤レンガ造りの食堂である。

なかなか可愛らしい外観に思えたが、中は宿屋と同じように飾り気がなく、質素で寂しい印象だ。

大きな長テーブルが四つに、丸椅子がぎゅうぎゅう詰めに並んでいて、席数は四十席ほどありそうに見える。

けれども昼時の今、ラナたちの他に客はいなかった。


ドアベルが鳴ったのに気づいて、奥から三十代前半と思しき店主が「いらっしゃいませ」と現れる。

白いエプロンをしめて青白い顔をした、ひ弱そうな店主だ。

ラナが「他に客がいないけど準備中?」と問いかけたら、「い、いえ、商い中です」と戸惑いがちな返事をされる。

「最近は滅多に客が入らなくて……仕方ないと諦めてます」とボソボソと話す店主は、顔を曇らせた。


町の異変について関わりのありそうな返答であったので、ラナはすかさず「どうして客が減ったの?」と尋ねてみた。

しかし店主は目を泳がせて、「それは……すみません」と答えてくれない。

「旅の方はお気になさらず。お好きな席へどうぞ。ご注文が決まりましたらお呼びください」と言い残し、逃げるように厨房に引っ込んでしまった。
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