懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
ラナは隣に立つカイザーと視線を合わせ、頬を膨らませた。

腕組みをしているカイザーも、『まただ』と言いたげな不満顔をしている。


この町の民は、旅人と話すのが嫌そうだ。

宿屋の主人もそうであったし、調査に駆け回った三日間、ほとんどの人が話しかけられては困ると言いたげに、すぐに逃げてしまうのだ。

調べにくいったら、ありゃしない。


フンと鼻を鳴らしたラナは、他の四人とともに明るい日の差し込む窓際の席に着いて、メニュー表を開いた。

『ご注文が決まりましたら』と先程、店主に言われたが、手書きのメニューには選べるほどの品目はなかった。


すぐに店主を呼びつけて、「ここに書かれているもの全部ちょうだい。五人分ね」と注文したら、驚き戸惑った顔をされた。

おそらく店主は、総額二万五千ゼニーもするが、支払えるのだろうかと懸念しているのだろう。

『私を誰だと思ってるのよ』とは言えないが、「お金ならあるわ」とラナが強気な視線をぶつける。

「この町はなんでもかんでも高すぎてムカつくけど、ちゃんと払うから、まともなものを食べさせなさい」と尊大に言い放てば、店主はペコリと会釈してから、駆け足で厨房へ戻っていった。

怖そうな客だと思われたのかもしれない。
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