懲らしめて差し上げますっ！～じゃじゃ馬王女の下克上日記～

「おい、ラナ。町人に対して威圧するような言い方はやめろ」と、隣に座っているカイザーが注意をする。

するとラナは、「わかってるわよ、悪かったわ」と素直に非を認めたが、相手が気のおけない仲のカイザーなので、口を尖らせて言い訳もした。


「だって、文句を言いたくもなるじゃない。この町に来てから、食事らしい食事をしていないんだもの。お腹が空けばイライラするわよ」


「食い意地の張った姫など、物語には出てこないぞ」とカイザーが鼻で笑ってからかえば、「姫に楯突く騎士もね」とすかさずラナが言い返す。

それが発端となって口喧嘩を始めたふたりを、テーブルを挟んで向かい側に座っているイワノフたちは呑気な表情で見ている。

喧嘩するほど仲がいいとは、このふたりのためにあるような言葉である。

いつものことだとばかりにすっかり慣れた様子で、止める者はひとりもいなかった。


しかし、「お待たせしました」と料理が運ばれてくれば、喧嘩はピタリと収まる。

料理ののった皿を器用に五、六枚もいっぺんに運んできたのは、先程の店主と、その妻と思しき若い女性だ。

背中にはスヤスヤと眠りについている赤ん坊を、背負っている。