懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
ふたりきりではなく、他者がいる場では、彼はラナを『姫様』と呼んで、上下関係を一応意識した態度を取る。

しかしカイザーの口の端はニヤリとつり上がっており、王太子の方へ顎をしゃくる様子を見れば、『やれ』と上から目線で指示していることが、ラナには感じられた。

カイザーに命じられるのは癪ではあるが、ラナも同意見のため、頷いて剣を受け取ると、扉の前で建築士と話している兄の方へ歩き出す。


近づいていくラナに最初に気づいたのは、王太子の近侍であった。

肘を曲げた右腕を腹部に当て、ラナに会釈した彼は、「姫様、ご機嫌よう。剣の稽古でございましたか?」と声をかけてくる。


「そうよ」と答えたラナに、王太子も振り向いた。

スケベな夢で頭の中に花を咲かせている様子の兄は、ニヤニヤとご機嫌な顔つきである。


「おお、我が妹よ。お前にも話しておかねばならないな。来年の夏より、ここを潰して新しい宮殿の建設をーー」


上品な作り笑顔を浮かべたラナは、兄の言葉を遮り、「却下いたしますわ」とピシャリと言い放った。


「この闘技場は兵士たちの訓練に必要不可欠な建物です。ここがなくなれば、わたくしも剣の稽古ができません。潰すことを許しませんから」

< 6 / 225 >

この作品をシェア

pagetop