懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
しかし、フンと鼻を鳴らした兄に、「訓練など、どこでだってできるだろう」と横柄な口調で言い返されてしまう。


「だいたい、お前が許すも許さぬもない。王位継承者はこのエイドリアン様なのだからな」


ラナの反対に気を悪くすることさえなく、高笑いをした王太子は、腰に手を当て、ふんぞり返るように胸を張った。


能無し権力者とは兄のことを言うのだろうと、ラナは呆れ、同時に苛立ちを覚えた。

妹が兄に逆らっても意味はない、と言われた気がして、ものすごく不愉快である。


可愛らしい顔立ちの鼻の付け根に皺を寄せたラナは、右手の剣を掲げるように持ち上げると、高い位置でブンブンと回し始めた。

剣先が王太子の頭上、二センチほどの空を切り、「や、やめないか!」と慌てて頭を抱えてしゃがみ込んだ兄に、ラナは作り笑顔で言葉を返す。


「訓練など、どこでだってできると、お兄様が仰ったのですわ。ですから、お兄様の目の前でやったっていいということですわよね」


ラナは兄に当たらぬギリギリのところで、剣をヒュンヒュンと唸らせている。

動くことのできない王太子は、五メートルほど離れた位置で腕組みをして見守っているカイザーに気づくと、焦りを顔に浮かべて大声で命じた。


「そこの騎士、なにをしている! ラナをなんとかするんだ!」

「……御意」


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