懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
「王位継承式は一年後だよ。カイザーどうしよう。マズイと思わない?」

「思う。非常事態だ。この国の行く末が心配になるな」

「だよね。お父様も頭を抱えてる。あのアホは、親を困らせることにかけては優秀なんだよ」


ラナは、困り顔の父を頭に思い浮かべていた。

すると彼女の剣を弾いたカイザーが、からかうように指摘する。


「親泣かせなのはお前もだろ。この前、ラナを大人しくさせてくれと陛下に言われたぞ。十九にもなってチャンバラごっことは情けない、とも仰っていた。もう少し王女らしく振舞ったらどうだ?」


ラナが毎日のように剣の稽古をしている理由は、主に運動不足解消である。

王女という身分を昔から窮屈に感じている彼女は、子供の頃はよく見張りの目を盗んで城を抜け出し、気晴らしに街へ出掛けたものだ。

淑やかにしろという両親の小言にうんざりし、【一カ月留守にします】という書き置きを残して、馬に乗って旅に出たこともあった。

それは九歳の頃の話だ。

カイザーだけを共に連れ、護衛もなしに王女が王都を出てしまったから、城中、大騒ぎになったのだ。

二日後、山越えしようとしていたところを捜索の兵に見つかって連れ戻されてしまったが、ラナは両親にどんなに叱られても、また自由を味わいたいと夢見たものであった。

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