すれ違いの純情【短編】
「そう言えばこの間言ってた問題はちゃんと片付いた?」


「え?」


ハンドルを握る彼の目線が一瞬、こちらへ飛んでくる。


「ほら? 弟の友達に告られたって言ってたじゃん?」


出来るだけ口にしたくない話題だが、あたしは…ああ、と口元を歪めた。


「何かもう…。ワケ分かんなくて放置って感じです。極力、考えたくないし」


「ふ~ん…」


そこで車内は沈黙に満たされる。




あれ…?




「って…! 友達がっ!」


焦って言い直すが、彼は眉を下げ、笑って言った。


「あはは…っ。いいよ、誤魔化さなくて。それ筑波さんの問題でしょ?」


「う…」


バレてたんだ…。


途端にカァ、と頬が熱くなり、あたしは膝上に置いた鞄を握りしめた。


「俺が言えるのはさ。恋愛感情って人それぞれだから…。

あからさまに好きだってアピる奴もいりゃ、その裏返しに…わざと冷たくする奴もいるんだよ」


「…え」


「そもそも筑波さんは…。何でその彼にイライラするの?」


「あたし…は」


そこで静かにエンジン音がやんだ。
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