すれ違いの純情【短編】
「着いたよ?」


「あ…」


窓の外には見慣れた風景が広がっていた。


近所の公園付近だった。


家の門扉(モンピ)の前まではさすがに気が引けるので、彼に送って貰う時はいつもここで降ろして貰う。


「ありがとうございました」


言いながら、あたしはシートベルトを外した。


それじゃあ、と車から降りようと、取っ手に手を掛けたところで、

「筑波さんさ…」

と話し掛けられた。


「俺の事はどう思う?」


「え?」


「俺の事思い出して…イライラしたり、する?」


「まさか!」


あたしはぶんぶんと手を振り、全力で否定した。


「浅倉さんは凄く優しくて、思いやりがあって、良い先輩だと思います!」


握り拳を作って力説するあたしを見て、彼は眉を下げ、誉めすぎだよ、と苦笑した。


「あんまり気負わずに…自然体で、ね?」


そう言ってあたしの頭をポンと撫でる。


「…はい」


自然体…?


若干、首を捻りたくなるような言い方だったが、そこはサラリと受け流し、あたしは車から降りた。
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