すれ違いの純情【短編】
心臓が痛いぐらい、早鐘を打っている。


「ヒナ…?」


「…え。エージには…関係ないよ」


そんなつもりは無いのに、動揺する自分に戸惑い、つい冷たい言い方になる。


永治は片手だけで頭を抱えた。



「お前さ…」



沈黙しながらも恐る恐る顔を上げる。



「俺の告白、無かった事にしてねぇ?」



「え」



ぶつかった視線に心臓がドクン、と揺れた。


「そりゃあ確かに。直接告わなかった俺も悪いと思うけど…。

ヒナのしてる事は一体何なんだよ?」


「…っ」


永治の真剣そのものの表情に、体中がカッと熱くなる。


震える唇を噛み締め、だ…、と発音する。


「だってエージ…。全然そんな素振り見せなかったし。

いつもムスッとして…

あたしにはにこりとも笑わないじゃん…っ」


心とは裏腹に、口をついて出る言葉は。


どこか自分の気持ちに言い訳をするようだった。


だから認めたくなかったのだ、と。


「だいいち、何であたしなのよ?」


「…知らねーよ」


うんざりした顔で、永治は頭を掻いた。


「気付いたら…。ヒナの顔しか浮かばなくなったんだよ」


水を浴びたように目の覚める感覚だった。
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