すれ違いの純情【短編】
告白
「ただいまー」
軽快な足取りで玄関の扉を開けると、不意に誰かとぶつかった。
ふわっと舞い上がる柔軟剤の香りに、一瞬、誰か分からなかった。
今日はカフェのバイトはお休みだし、大学の授業も1コマで済んだから、友達と久しぶりにカラオケを楽しんだ。
その直後の帰宅だったから無論、気分は上々。
しかし出し抜けにぶつかったその対象を見て、あたしの心は一気にざわついた。
「なんだ、ヒナか」
「…エージ」
あたしは無条件に眉をひそめた。
玄関先で突っ立っていられても迷惑だ。
そう思うのについ沈黙を守ってしまう。
高校の制服を着た弟の友達、折部永治(オリベエイジ)はここ最近、毎日のように家へ遊びに来る。
聞くと、彼は弟の秋人(アキト)と同じ部活で、且つ‘親友’というカテゴリーに当てはまるらしい。
不機嫌なあたしをよそに、永治はあれ? と不思議そうに言った。
「なんかヒナ、顔赤くね…?」
「え?」
ズイと寄せられた顔に息をのみ、あたしはたじろいだ。
吸い込まれそうな程、深い黒目が魅力的で、思わず目を逸らしたくなる。
軽快な足取りで玄関の扉を開けると、不意に誰かとぶつかった。
ふわっと舞い上がる柔軟剤の香りに、一瞬、誰か分からなかった。
今日はカフェのバイトはお休みだし、大学の授業も1コマで済んだから、友達と久しぶりにカラオケを楽しんだ。
その直後の帰宅だったから無論、気分は上々。
しかし出し抜けにぶつかったその対象を見て、あたしの心は一気にざわついた。
「なんだ、ヒナか」
「…エージ」
あたしは無条件に眉をひそめた。
玄関先で突っ立っていられても迷惑だ。
そう思うのについ沈黙を守ってしまう。
高校の制服を着た弟の友達、折部永治(オリベエイジ)はここ最近、毎日のように家へ遊びに来る。
聞くと、彼は弟の秋人(アキト)と同じ部活で、且つ‘親友’というカテゴリーに当てはまるらしい。
不機嫌なあたしをよそに、永治はあれ? と不思議そうに言った。
「なんかヒナ、顔赤くね…?」
「え?」
ズイと寄せられた顔に息をのみ、あたしはたじろいだ。
吸い込まれそうな程、深い黒目が魅力的で、思わず目を逸らしたくなる。