すれ違いの純情【短編】
頬を伝う涙にはとうに気付いていたが、あたしは正面から永治を見つめた。
「え…っ、なん…」
意外にも、彼は驚き、動揺していた。
「映画…行くんじゃなかったの?」
あたしの言葉に、永治は顔をしかめた。
うるせーな、と視線を外し、舌打ちをついている。
その仕草についカッとなった。
「…んでよっ」
「え?」
「何で笑わないの…!?」
「はぁ!?」
あたしは両手を伸ばし、永治の頬に触った。
「笑ってよっ! あたしの前でもさっきみたいに笑ってよ!!」
「やめ…っ」
無理やり手で彼の頬を釣り上げ、笑わせようと躍起になるが。
両手首を掴まれ、それすらも叶わない。
「なに、ワケ分かんねーこと言って…」
「もうあたしの事なんか、どーでもいいんでしょ!?」
人目もはばからず、あたしはそう叫んでいた。
膝から崩れ落ち、子供のようにわんわんと泣きじゃくる。
後から後からこみ上げてくる涙は、干上がった地面に幾つもの丸いシミを作った。
…永治はきっと困ってる。
きっと呆れてる。
分かっていても止められなかった。
だけどその時。
あたしは心地よい温もりを感じた。
「え…っ、なん…」
意外にも、彼は驚き、動揺していた。
「映画…行くんじゃなかったの?」
あたしの言葉に、永治は顔をしかめた。
うるせーな、と視線を外し、舌打ちをついている。
その仕草についカッとなった。
「…んでよっ」
「え?」
「何で笑わないの…!?」
「はぁ!?」
あたしは両手を伸ばし、永治の頬に触った。
「笑ってよっ! あたしの前でもさっきみたいに笑ってよ!!」
「やめ…っ」
無理やり手で彼の頬を釣り上げ、笑わせようと躍起になるが。
両手首を掴まれ、それすらも叶わない。
「なに、ワケ分かんねーこと言って…」
「もうあたしの事なんか、どーでもいいんでしょ!?」
人目もはばからず、あたしはそう叫んでいた。
膝から崩れ落ち、子供のようにわんわんと泣きじゃくる。
後から後からこみ上げてくる涙は、干上がった地面に幾つもの丸いシミを作った。
…永治はきっと困ってる。
きっと呆れてる。
分かっていても止められなかった。
だけどその時。
あたしは心地よい温もりを感じた。