すれ違いの純情【短編】
永治の力強い腕に、ギュッと包まれている。


「エー…ジっ」


あたしも彼の背中に手を回した。


「なぁ…。自意識過剰だって…また笑うかもしんねーけど」


永治の声は少し震えていた。


「ヒナ、俺の事好きだろ…?」


あたしは大きく、首を縦に振った。


「…好きだよっ、エージが…大好きだよっ!」


大きな手があたしの髪を撫でる。


「やっぱり…」


そう言って彼はあたしの肩に手を置き、少しだけ距離をあけた。


眉を下げて無理やり作った笑顔は、無邪気な少年のよう。


「へへ…っ」


それが可愛くて、あたしも満面の笑みを浮かべた。
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