すれ違いの純情【短編】



帰りの電車に揺られながら…。


やはり永治の事を考えていた。




‘あいつヒナの事好きなんだって’




昨日、秋人に言われた言葉が再び蘇る。


…また家にいたらどうしよう。


どんな態度を取ればいい?


はっきり言って…今日は会いたくない。


左へ左へ、パラパラ漫画をめくる勢いで流れていく、窓の景色に目を留めた。


茜色に満ちた風景を、見るとはなしに眺めていた。


永治といるとあたしは変なんだ。


自分で自分を…コントロール出来ない。


そう思うと自然と溜め息がもれた。






 *



帰宅後。


悩み事を抱えてこれほど馬鹿馬鹿しいと思ったのは、今日が初めてかもしれない。


…てか。普通にいるよね? あいつ。


秋人と並んでゲームをする永治に、恨めしそうな視線を送る。


…ったく。毎度毎度リビング占拠しやがって。


しかめっ面で嘆息していると、不意に目が合いそうになった。
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