こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
第一章 最悪な偶然
嵐のように激しく求めあった熱が嘘のように冷めていくと、私はぶるりと身体を小さく震わせた。

「凛子。寒いのか?」

「いいえ、大丈夫です」

しっとりと汗ばんだ肌はべたついていて、私は一糸まとわぬ気だるい身をベッドに沈ませていた。

いつの間に起き上がったのか、ベッドの中で私の頭をずっと撫でていた彼は、すでに着替えを済ませ、少し乱れた髪をさっとなでつけるとネクタイを鏡の前で絞めた。
まるで何事もなかったかのように。

「木崎課長。もう行くんですか?」

のろりと身体を起こして尋ねると、木崎課長はスマホをチラッと見て言った。

「ああ。今夜は残業っていうことになっているが、そろそろ帰らないと色々面倒だからな。しばらく休んだらお前も気をつけて帰るんだぞ」

「……はい」

「また連絡する」

木崎課長は手短に一服して灰皿に煙草を押しつけると、そそくさとホテルを後にした――。
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