こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
「昨夜、お前の身体を触った時、なんとなく熱があるんじゃないかと思ったが……あんな雨降りに傘もささずにほっつき歩いてるからだ」

これじゃまるで叱られている子どもみたいだ。情けなさで思わず身を縮めてしまう。

「だから……あれ以上のことはしなかった。俺が我慢強い男だったことに感謝しろよ」

「なっ」

私の身体を気遣ってくれたんだ。と一瞬思ったけれどすぐに撤回する。

「一時の感情で流されてあのまま俺に抱かれていたら、お前はきっと後悔するはずだ」

そう言われて言い返す言葉を喉の奥へ押しやる。

「俺に抱かれて後悔するなんて、そんなの心外だからな」

冗談交じりにふっと笑うと最上さんは部屋を出て行った。

俺に抱かれて。って、なによ……自信過剰じゃない。

最上さんがやめずに最後まで続けていたら、彼がいうように後悔していただろうか。ぐぅの音もでない。

ふと部屋の隅に視線をやると、見覚えのある荷物が袋に入ってひとまとめに固まっているのが目についた。

あれって……私の!?

透けて見える中身は私の服や化粧品などの小物、雑貨類だ。しばらくして再び最上さんが水と、いつの間に作ったのかできたての卵雑炊が載ったトレーを手に戻ってきた。
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