こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
「お前の家は今日からここだ」

いや、いやいやいや! ちゃんと自分で新しい物件探しますから!

心の中でそう否定してぶんぶんと首を振った。

「そういうわけにはいきません」

掠れた声が喉から出て小さく咳き込む。

これは完全に風邪を引いちゃったな……。

そんなふうに思っていると、最上さんが腰に手を当て呆れた口調で言った。

「大家がお前の保証人である親父さんに連絡したって言ってたぞ。電話かかってこなかったか?」

ええっ!? そ、そんな……余計なことを。心配かけたくないから言いたくなかったのに。

そういえば、ここ数日精神的ダメージが大きい出来事がありすぎてまともにスマホを確認していなかった。さっき、見た時に数件着信やメールが入っていたけれど、あれは父からの連絡だったのだ。

「自分の娘の家に空き巣が入ったと知って、俺のところに半狂乱気味の親父さんから電話がきたんだ。ひとまず俺のマンションで無事でいると伝えておいた。ああ、それから伝言だ」

会社に行く準備を整え、最上さんはビジネス鞄を手にする。

「お前の親父さん、もう連帯保証人にはならないって言ってたぞ」

……は? そ、そんな。
< 102 / 317 >

この作品をシェア

pagetop