こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
それはもう家を借りることができないということを意味する。

賃貸契約には保証人が必要だ。保証料を支払ってまで保証会社にお願いするのも手間がかかるし、ちゃんと親もいるし会社にも勤めているのにそんなことをしたら逆に怪しい。

「ああ、もう時間だな。今日は会社休んどけ、俺から連絡しておくか?」

「会社に連絡くらい自分でできます」

私の欠勤を最上さんが入れるなんて妙に思われる。もう、これ以上変な噂を立てたくない。

「それから、午後になったら小宮という男がここに来る。俺の秘書だ。今日一日、俺が会社に行っている間、お前の世話を頼んであるからなんでも言ってくれ。その調子じゃ、無理してコンビニに行けるような感じじゃなさそうだしな。ほら、一応解熱剤ここに置いておくから、食欲なくてもそこにあるもの食えよ?」

バタバタとしながら最上さんは早口で言い、部屋を後にしようとした。

「あの、色々ありがとうござました……いってらっしゃい」

腑に落ちないところはあるけれど、小声でお礼を口にする。

起き上がることもできず布団の中から顔だけ向けて彼を見送ると、一瞬、意外そうな表情を浮かべて振り向いた。
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