こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
「どうしたんですか?」

「いや、なんか……誰かから見送られるって、変な感じだなと思って。じゃあな、いい子にしておけよ」

最上さんは今度こそ部屋を出て行った。そして玄関のドアがしまる音。

ベッドの横にまだ湯気を立たせている卵雑炊が置いてある。

そういえば小さい頃、風邪を引いた時に家政婦さんが雑炊をよく作ってくれたっけ。

薬を飲むなら少しなにか食べたほうがいい。そう思って、とりあえずこの今にもへばりつきそうな喉の渇きを癒そうと、グラスに入った水を一気に煽った。そして雑炊を手に取るとふわっとダシの利いたいい匂いが……すると思うけど、残念なことに鼻が詰まってそれを感じることができなかった。けれど、それをひとくち食べてみると想像以上に美味しくて、今まで失せていた食欲が一気に湧いてきた。

そうだ。お父さんに電話しないと。

心配かけたくないのは山々だけれど、それでももう知れてしまったのならば話すしかない。
雑炊を食べ終わって薬を飲むと、私はスマホを手に取り父の番号を呼び出した。

『凜子か!? お前、大丈夫なのか?』

もしもし。もなく数回コールで勢いよく父の声が耳に飛び込んできた。よほど心配していたのだろう。ホッとした息や震えるような声がスマホを通して聞こえてきて、罪悪感を覚えた。
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