こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
しばらく横になってうとうとしていたら二時間近く経っていた。

私はからっぽになった器とグラスをトレーに載せると、のろのろとベッドから起きて部屋を出た。すると。

え……? だ、誰?

リビングに出ると、スーツを着た知らない男の人がいてふと目が合った。もちろん最上さんじゃない。

まさか! また空巣……とか?

マンションのセキュリティーはかなり厳重のはずだ。それに泥棒にしては身なりもきちんとしていて清潔感がある。

あまりにも驚いてしまい、うっかりトレーを手元から落としそうになった。

「あの……」

「ああ。申し訳ありません、起こしてしまいましたか? おはようございます。私、小宮翔と申します」

小宮? あ、もしかして最上さんの秘書の人?

――午後になったら小宮という男がここに来る。俺の秘書だ。

もうそんな時間かと思って壁に掛けてある時計を見た。
時刻はまだ十時ちょっと手前。

え、まだ午前中なのに。

そんな慌てる様子に小宮さんが苦笑いして言った。
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