こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
俺の実家が日本で大手企業を運営していると、なにで知ったか知らないが今までそんなこと話したこともなかったし、返ってそれが彼にとって気に食わなかったのかもしれない。
しかも、その電話の向こうで聞き覚えのある女の声がして凍りついた。

「……そこにいるのは、ソフィアか?」

ソフィアはその当時、交際していたイギリス人女性だった。俺は一度に友人からも女からも裏切られ、会社設立資金が一文無しになってしまった俺は、傷心のまま帰国せざる得なくなった。

簡単に人を信じた自分が馬鹿だった。

親の反対を押し切ってまで「絶対に起業してやる!」と豪語しておきながら、結局失敗に終わった。惨めで情けなくてしばらく立ち直れなかった。そして俺は腹をくくって実家の会社に入り、上層部の年輩者たちから「落ちこぼれ」のレッテルを貼られて苦難続きの長い月日が過ぎていった。
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