こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
根も葉もない噂話を聞いてから数日後、いきつけのBarシュエスコでなんと偶然にも彼女と再会した。

物憂げな表情をした彼女をよく見ると、いくつかの不自然な点が目に留まった。

これは……男と寝てきたな。

女の勘というものもあれば、男の勘というものもある。

決定的だったのは首筋の痕。それはまだ新しく、その赤い刻印はまるで見ず知らずの相手から牽制されているとさえ思えた。その相手が木崎かどうかわからなかったが、なんとなく噂話が事実であると直感した。

その身体からは、つい今しがたの情事を想像させられるような色気を醸し出していたが、それを感じ取れるのはきっとそれは男にしかわからない感覚だ。なぜか俺は強烈に彼女に惹きつけられ、そして猛烈に嫉妬した。隣で不服そうにグラスを傾けている彼女は、俺がそんなことを考えているなんて知る由もないだろう。
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