こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
確かに彼は職場の社員からの信頼が厚く、「頼りになる憧れの上司」と皆、口を揃えて言っている。まだ仕事に慣れない私を陰で支えてくれていることにも気がついていた。くだらない冗談を言って私をからかう時もあるけれど、プライベートとはまた違った真面目な一面に目を引かれる。けれど、“憧れ”と“恋愛”をまたはき違えているのではないかと思うと、最上さんのことが気になるという気持ちに迷いが生じてしまう。木崎課長の時のように……。

『凛子? どうした?』

「え? あ、ううん、なんでもない」

会話が途切れて怪訝に思った父の声に我に返る。明るく取り繕ったところでそろそろ電話を切ろうとした時。

『凛子、やっぱり最上君との結婚は嫌か?』

いきなり改まった父からの問いかけに私は黙る。
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