こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
掃除するくらいなら自由に入ってもいい。と言われてはいたけれど、最上さんがいないときに勝手に入ってもいいものかと悩む。

ゴミを回収するだけだし、いいよね。

「失礼しまーす」

小声で言いながら誰もいない書斎に足を踏み入れる。初めて入るその部屋に電気をつけると、背の高い本棚が並び、経済学やマーケティング関連の雑誌が無造作に収められていた。その隣にはゆったりできそうなカウチソファ。持ち帰って仕事をするためか大きめのデスクの上には山積みの書類とデスクトップが二台、そして座り心地のよさそうな黒い革張りのリクライニングチェアがある。デスクの下のゴミ箱の中には丁寧にシュレッダーにかけた紙くずが入っていて、それをこぼさずに袋に詰めていた時だった。

「わっ!」
< 169 / 317 >

この作品をシェア

pagetop