こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
「酒井さん、こっちです」

店に入るとすでに小宮さんは奥のソファ席で待っていて、私に軽く手をあげた。

「すみません。突然呼び出したりして」

「いえ、少し飲みたい気分だったので、連れ出してくれてありがとうございました」

そう言うと彼はにこりと笑って向かいに座るように促した。

小宮さんも仕事終わりなのかスーツをピシッと着こなして、初めて会った時も思ったけれど、最上さんのように仕草も上品だった。飲み物を注文するとすぐに運ばれてきて喉を潤す。

「コールセンターでのお仕事にはもう慣れましたか?」

「はい。特に今のところは問題ないです。職場の人たちもいい人だし」

「そうですか、それはよかったですね」

他愛のない話をして、小宮さんがジントニックの入ったグラスに手をかけたまま動作を止めると、少し言葉を考えているような顔をして言った。

「……今夜、あなたを呼びだしたのは最上のことです」

本題が来た!
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