こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
彼の悪い癖ってなに? 傲慢で、口も悪くて態度もでかい。でもそれは癖とは少し違う。

そんなふうに思っていると、小宮さんが小さくため息をついた。

「今から十年前、最上が海外で生活をしているときの話です。彼は実家を継ぐことに反発して自分で起業しようとしていたんです。そのとき、大学のOBだった英国人のマックス・アスウェルトという男と共同起業を計画していたんですが……」

小宮さんはいったん間をおいて、表情を硬くした。

「起業のための資金をすべて持ち逃げされ、挙句に当時交際していた女性にも裏切られて……それから日本に帰ってきたのはいいのですが、毎晩飲み歩いてはどこぞの知らない相手と喧嘩をして、人の言うことも聞かないし、かなり荒れた生活をしていたんですよ」

「え?」

目が点になっていると、小宮さんは小さく笑った。

「まぁ、いきなりこんなことを言われても、今の最上を見ていたら想像もつかないでしょうね」

最上さんにそんな過去があったなんて……。

知られざる彼の過去の話を聞いて言葉に詰まる。
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