こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
それは私にも覚えがあった。自分も同じだからだ。信じたいのに怖くて逃げだしたくなる。だったら大切なものなんてなくなってしまえばいい。そう思って私はハッとした。

昨夜、私が最上さんの気持ちを聞きながら木崎課長のことを口にした途端、彼が暴走した。

だから、私にあんなことを……?

もしあのとき、最上さんの気持ちを受け入れていれば、自分の弱さに勝るほどの気持ちを伝えていれば、あんなふうに我を忘れるようなこともなかったのか、とそんな後悔が駆け巡る。
私、自分のことばかり考えて……どうしてわかってあげられなかったんだろう。

「酒井さん?」

一点だけを見つめて微動だにしない私を、小宮さんは怪訝な顔をして見ている。

「すみません、ちょっと考え事をしていて……」
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