こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
「昇進試験前に離婚が成立したと、先日報告がありまして……個人のプライベートにかかわる話は避けたいのですが、精神的に不安定になっていたようです。昇進試験も散々な結果で上層部もこれでは任せられないと、そう判断を下しました」

「そう、だったんですか……」

出世の失敗の原因が離婚でなくとも、離婚の原因が自分だったらと思うと頭の中が真っ白になる。なにも考えられずに放心していると、小宮さんが言いにくそうに口を開いた。

「あなたに余計な心配をかけたくないから黙っておくように、と最上から言われていたんですが、酒井さん自身も警戒しておいたほうがいいと思ってお話したんです。いわれのない恨みをあなたに向けるのではないかと……」

それを聞いて、小宮さんはやっぱり不倫していたことを知っていたのだと悟る。直接的な言い方をしないのは彼なりの配慮なのだろう。

「わかりました。気にかけて頂いてありがとうございます。私の中で木崎課長とのことはもう終わった話なので、自分の身は自分で守りますから大丈夫です」

こんなことで小宮さんに心配をかけるなんていたたまれなかった。それと同時に自分のした行いがどんなに恥ずかしいものかを思い知らされるのだった。
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